─自宅の工房>>251─
[ ふっと憐れむように目を細める。]
──そうですね。
あなたはこの村の方ですから……そう信じてらっしゃるのも無理はありませんね。
でも、不思議には思わなかったのですか?
もう何十年も正式な儀式なんて、行われなかったそうじゃありませんか。
それなのに、何故今頃になってソフィアが殺されたんですか?
開明的だった村長さんは、新聞記者さんを呼び寄せた直後に亡くなった。
今度は夫人も……
……そう言えば、村長夫人は亡くなる前、新聞記者さんに儀式について色々教えていましたね。
おかしいとは思いませんか。
まるで誰かがこの村が変わるのを懼れて、昔通りの儀式をわざと起こしているような……
この村の伝統に従わない、不要な人間を始末して、他の村人を昔のように森の神を怖れる村に戻そうとするかのような……
[ 幾分かの不安と怒りを声に込めて、彼は疑惑という名の糸を紡ぎ、不信の網でテッドを絡めろうとしていた。]
(258) 2010/08/03(Tue) 21時頃