は、己の名前、知ってやがったのか。
……黙ってるなんてオマエ悪趣味だな。
[背後で眼鏡の縁をなぞりながら言っている副官の顔を思い浮かべ、
無性に頬を伸ばしてやりたくなりながら、表面には苦笑を見せた]
『あんなわかりやすい偽名がありますか。
読み方変えただけじゃないですか…。隠すつもりならもっとひねってください。
士官学校の首席ならどこかに記録が残っていることは想像できるでしょう』
[さも当然という口調の副官にふと憎らしさに似た何かを覚える。
しかしぐっと堪えて、まあな、とだけ口にした]
『この場所の空気がとても好きなので、なくなってしまうのは寂しいのですが…
師団長が自分の名前を名乗れる日が、8師団のなくなる日、でしょうか。
ああ、僕は家業がありますので仕事はご心配なく。
師団長も怪力以外に取り得がないままだったら…うちのガードマンでも?』
(246) Cadenza 2011/04/05(Tue) 03時頃