…仰代の、こえ?
[だが、裏切り者の名として仰代が上がれば流石の男も耳を疑う。>>201
戦闘員と数えぬ柔和な当主を思い浮かべても、あの女が裏切るとはとても思えず。しかし判断材料が揃っていない事もまた確か。
裏切り者が大須賀と紫藤の二人きりとは到底思えず、残った顔触れを数えても、潔白を証明出来ていないのは、
もう、彼女だけ。
裂け血のにじんだワンピースは重傷にもかかわらず、見せられた細い腕をどれだけ観察しても傷は何処にも見当たらない。
それにこれは、自分が過去施された治療と比べて異質その物でしかなく、
こうも綺麗に治る物、なのか?
そもそも、日向は幸々戸との戦闘の後直ぐ此方へ来た。仰代と会ったのは恐らくそれより前。
だというのに、治癒の力がこうも長く、大きく出るとは。
黒革越しの手が少女の細腕に触れても、術に疎い三黒の血では生憎何も理解はできず。
ただその代わり、警告とばかりに太陽≪サイモン≫と繋がった己の聖痕が、熱を帯びた気がした。]
俺は、
…まだ会ってない。
(206) 2015/09/17(Thu) 03時半頃