[目元を覆う布地の感触。眸は開いたままであるというのにいつまでも明らむことのない腕の中で、潜むように息を吐く。
首筋にあたるはちくりとした無精髭の感覚>>185
似ても似つかぬ感覚を与えつつ、黒蝶を思い出させるような触れ合いに鉄錆の唇を引き結び声を噛み砕く。]
──ど、こが。
[直に触れる指先は、昨晩身体を掠めた硬い革手袋とは異なった温かみのある掌。>>186
だというのにそれを黒蝶の翅だと喩える唇に咽を震わせた。
それがその蝶の目的であることに気付かず、まだ殆ど芯のない柔らかな胸先を弾かれれば指先を走る感覚に、息を詰まらせる。
追い打ちをかけるように指先を蠢かし、執拗に与えられる毒には熱を孕んだ息が一つ漏れて。]
──……っ!
[吐息の狭間にまろびでた声に、それが色のあるものだと自覚すれば頬に血が溜まり赤く色付いていく。]
(191) 2014/09/19(Fri) 01時頃