― 惨劇の現場 ―
[もう足を止めてもいい頃だろう。そう思い走る速度を緩め出した頃だった。とある路地裏に足を踏み入れて――ふと、背筋に寒いものを感じた。何か、不吉な予感がした]
……っは、……はあ、……
……おい、……ちょっと、構えてろ、……
[ぱたりと、走りを歩みに変える。いつ何に襲いかかられてもいいようにと、荒い呼吸混じりに途切れ途切れに、スティーブンに指示をしておいた。男の内に生じた予感の正体は、そのようなものではなかったのだが――其処まで察知出来る事はなく]
……、……
[息を潜めて奥へと進んでいく。並ぶ民家の横を通っていきながら、しかし潜む者の気配に気が付く事はなかっただろう]
……なんだ、これ。
[ふと、何かを踏んだような気がして、足元を見た。其処には緑色の液体がどろりと零れていた。スライムか何かの残骸か残滓だろうか、と考える。気味が悪いな、などと思いながらも、出所に行き着く事はやはりなく、男はそのまま、奥へと進んでいき]
(181) 2011/10/22(Sat) 05時頃