[はたして彼女>>163は、自分の不躾ともいえる視線>>164をどう思っただろうか。
視界の隅で、同じく食事をしていた同僚>>170が席を立つのが見えた。それにつられて腕時計を確認すれば、思いのほか時間が経過していたようで。
彼一人に業務を押し付けるつもりなどさらさらない、むしろ自分の仕事を取られてたまるかとすら思う。
ましてや患者とはいえ、女性と会話していて遅れたとなれば、穏やかな物腰を装ったその口からどんな嫌味が飛ばされてくるか。]
すみません、また聞かせてください。
薬の件はこちらで相談しておきますので、ご心配なく。
……ええと、あまり、思いつめずに。
[机の上のメモ帳をポケットに収めて、自らのコーヒーカップと、それから空になった彼女のぶんの皿も纏めて、慌ただしく席を立つ。
思い詰めたような彼女の様子に、逡巡してから掛けた言葉は月並みな励ましだったけれど。
そのまま返却口に食器を下げれば、先に出て行った医者を追うように、食堂を後にしただろう。]
(181) 2014/06/22(Sun) 14時頃