ん、……いや。
大した問題ではないよ。
[そう返すさなかには、丸い目は脇へやや泳いでいたか]
怪我の心配ならば、それも無用だろう。
人の血の匂いしかしないからね。
ああ、それならば何よりだ。
……ほう。それはそれは。
随分、臭っただろう?
[人狼との単語には目を細め、此処にはいない彼らを揶揄する形で笑った。そうして笑い、フィリップが意気揚々と初体験を語るのを、たまにその相棒を一瞥などしつつ聞き届ける、様はいかにも先輩らしかったか。
実際、男はこの新入りを悪しからず思っている。眷属を増やす事については、特別保守的ではない、己は主に面倒でやらないがやる者は好きにやればいいと考えている程度だし、
著作を読んで貰っている事はやはり作家としては嬉しいもので、彼の絵の売り込みにも割合好意的な返事をしていもするし、
倦み易い吸血鬼の日々、たまに新鮮な風吹くのはいいものだとも思う]
(165) 2016/12/04(Sun) 02時頃