[黒猫は背を丸めて歩く。
厳しかった北風もいつの間にか止み、日差しは穏やかな春を告げていた。
それほど大きくない体躯なのに、猫背でいっそう貧層に見える。けれども、己の悪癖は直らず。叱られてもすぐ、背中を萎めてしまう。
窓の外を見やれば、裸だった樹は少しずつ芽吹いていきて。
名も知らぬ花が咲き始めていた。
こんな日にデッサンをすれば気持ち良いかもしれない。]
[気が付けばもうすぐ自分も最上級生と呼ばれる立場になる。
そんなに偉くなった覚えはない。ところてんのように、システマチックに押し出されていくだけなのだ。]
――…あ。
[リノリウムの音がやたらと高く響いた。
向こうには、>>121氷空のような青いカーデガンを羽織った人が。
黒髪が陽光で艶めいている。
向こうは気が付いただろうか。
もし気が付けば何かしらの会話をしただろう。
気が付かないようならば、黒猫は美術室へとそのまま足を運ぶ。]
(138) 2014/03/04(Tue) 00時半頃