……は、
なに、を。
[目の前に煌く銀色の刃物に、息が引き攣る。相手の言葉なんて耳に入らない。ただ自らを傷付ける為だけに引きぬかれたそれにしか、意識がいかなかった。
――殺されるのか、と。半ば本気で考えて。けれどその考えをどうにか打ち消す。ただそうであってくれと、そう思っていただけだけれど]
い、いやだ、あ、頭おかしいんじゃないのかあんた、
[彼の意図がようやく分かって、思わず縋る様な視線を向けた。意味等無いという事も分かっている。けれど、他にどうすれば良いか分からなかった。
どうにか自由に出来る左手を、ナイフを握るその手の上に添えて。それを制止しようと、込められた力に抗う]
ッあ゛……ぐ、
クソ、や、やめろ……!
[肉を引き裂かれる感覚に悪態を吐く。傷口から流れ落ちる血液と、恐れと痛みに溢れた涙が机を汚した。
けれど自分が力で勝てるわけがないという事は、自分が一番よく分かっていた。だが、だからといって抵抗しないなんて選択肢があるわけも無くて。必死に彼の腕を、そのナイフを退かそうとするのだけれど、意味はあったかどうか]
(124) 2014/06/28(Sat) 22時頃