―…。
[部屋の中で綺麗な細工の施された小箱を見つけた。薔薇の花を模した意匠を指でなぞる。
グロリアが以前にこの箱を自分に見せてくれたのを思い出した。けれど彼女はもうこの世に存在しない。
女はきつく唇を噛み締めて、揺れる感情を堪える。
どろどろとした醜い感情を抱えながら彼女を弔いたくはない。
―せめて今だけは彼女を悼む事だけを考えようと。
女はそれを元に戻して小さく息をつく。華奢な小箱は棺にするには小さすぎる。
>>118其処へ女が小箱に意識を向けていた間に室内に入っていたサミュエルの姿が見え。
部屋の前で交わされていた彼らの話は女にはよく聞こえておらず、それ故に彼が自分を庇うような発言をしていた事も知らない。
表情のない顔をちらと棚の方へと向かうサミュエルに向ける。
―グロリアの部屋に行っていた彼は信じるに足る者か。
それを見定めようとするように。**]
(123) 2013/12/06(Fri) 01時頃