[黒宵がキッチンから持ってきた揚げ団子と茶器に
一度、視線を向けるも――。
食べる気にならない、とばかりに緩く首を横に振り。
こうして、今に至る、という訳であった。]
――――…
[聞き取れたのは、黍炉もやはり「呼ばれた」身らしいということ。
鬼の噂のこと、あの猟奇事件のこと、
それに、役立たずのあの警察のことだったり。
聞きながらも零すひとりごとは、何処か現状逃避にも近いもの。]
黍炉さんのお店で、トレイルに、選んで貰ったんだっけ。
[零しながら触れるのは、左手指に嵌めた指輪の石。
所謂、表の仕事の方で、黍炉の顔は知っていた。
ある時は、商品の仕入れというより店内装飾のために、
壁に掛けられる伝統的なお守りを買い求めに出かけた。
またある時は、本当に私用として。
交際相手と共に、アクセサリーを買い求めに来たものだった。]
(114) 2013/05/22(Wed) 22時半頃