[そうして漸く彼女の手に渡った未読の文と、寄せて吹き込まれた言葉。
急な接近に反射的に引き掛けた体は、その文字列にぴたりと止まった。
>>92それはなんとも巫山戯ていて、挑発的な “宣戦布告” 。
無駄な欲を持つ暇さえも与えぬ人生は、目先にちらつく耳触りの良い言葉にも、早々揺らがされたりはしない。
はあ と息を吐き捨てながら、手の内に返された文は 用済みとばかりに懐へ押し込んで。]
…あたしの耳にはしっくり来ねえ。
あんたも、愛想は尽かしちまったのかね。
[聞き慣れぬ単語に首を傾げたのも、束の間。砕けた砂糖菓子の欠片を飲み込んで、次いでにと近付いた彼女の体、その鼻先をするりと撫ぜ。
“意外と鼻筋が通ってるじゃぁないか” などと 些か逸れた事を呟いては。]
ただ、…盗まれた侭ってのは具合が悪い。
姉さんが何を盗まれたか、何を持ってるかも知らねぇあたしには知り様が無いけどさ。
仕置きとやらは、あんたがするつもりかね。
[不安げな言葉を掛けてくる割に、そう焦る様子も見えない彼女は 果たして自身の身に起きた事を理解してはいるのだろうかと 先の問いへの意趣返しも含めて首を傾げて見せただろう。]
(111) 2015/01/23(Fri) 20時半頃