[自分の零した一言に帰ってきた、ひやりと冷えた言葉>>103には、女はさも申し訳無さそうに眉を下げて見せながら。
この国に来て、初めて出会った異人の男。
右も左も分からぬ自分に、何やかんやと世話を焼いてくれた事は記憶に新しい。
物言いの棘は、最早癖のようなものだから。それでも世話になった相手の気を悪くさせたと思えば、少しくらいは反省の色を見せてみようかと。
結局、この砂糖菓子の事を聞くことは出来なかったけれど。
――あぁ、せめてこの菓子の名前だけでも聞けば良かったかな、なんて。
そうは思うも、瓦版へと興味を示したらしい相手を見れば、開きかけた唇をそっと閉じて反応を伺う。]
――……先生は、そう言いはる思いました。
でもね、何でも大名さんまで盗まれはったんですって。
[嘲笑の篭った笑みと共に吐き出された言葉>>104には、少しだけ呆れたようにクスリと笑い。
自分が手紙を見せたのなら、そっと白衣のポケットへと伸びた手には、小さく小さく――解らぬ程度に眉を潜めはしただろうか。
冷たい表情を見せる事の多いこの薬師の表情を、変える事に成功したとあっては、胸に広がる微かな愉悦を禁じ得ずに。]
(110) 2015/01/21(Wed) 20時半頃