―また別の日・それは赤と黒の男からの餞別―
『何これ?りんごに似てるけど、ちょっと違う…?』
[“焔君”がくれた果実。なんで半分だけなんだろう、と不満を持った僕はその価値をわかっていなかった。天国のどこかに、たわわに実っているという“成長の果実”。
成長とは、生き物が自らの力で大きく伸びていく為の力。<生命力>の塊であり、凄まじいエネルギーを秘めているのだという]
『何でそんなの君が持ってるの?…まあいいか。ありがとう!』
[閉ざされし聖地の結界の破壊くらいはできるかな?と思いながら、僕は笑ってそれを受け取った。何故それをくれたのか、彼の内心はわからないが、それが彼と出会った最後の日になった。
吹けば飛びそうな、1000年も前の記憶。もう“焔君”の顔は朧げだ。赤で黒だったのは覚えているんだけど**]
(108) 2011/06/10(Fri) 16時頃