[先の揚羽とは異なる僅な翅音を羽ばたかせながら、歩み寄る白蝶に、何の色も浮かばぬ瞳を向け。軈て窓枠からその顔がはきりと見えたならば、「彼」とは異なる灰青の蝶頭を見届け。
ぷかり。
自分の顔を煙が覆ったならば、ちいさく驚愕に瞳を染めては見開いて、顔を背けてはけほけほと咳を零したのだったか。
其の後其の白蝶に向ける瞳は穏やかな物では無く。
唯小綺麗に貼り付けた笑みの上、視線は真冬の雪の様に。]
――キミが花でないことが、いま酷く悔やまれるよ。
[暗に花であったならば、夜宴の裏その口先から教えを遣ったというのにと。言の葉の裏滲ませた色には、白蝶は気付いただろうか。
そうしてゆうるり黒の花>>80へ向き直る途中、黒服の心配をされたならば。動きを止めては自身を見下ろし、暫く動くことを止め。
パチパチ、またたき二つ。
其のあとに、漸く「何もない」と。飾らぬ言葉を投げ。
視界の隅、窓枠の中。煙を授ける白蝶には呆れの息を吐き。
これ以上は野暮だろうと、フイと視線を完全に花へと向ける。]
(108) 2014/09/18(Thu) 01時頃