わかりました ほなまた落ち着いたころに
お姉さんの三味線の音とお唄 探しに来ますね
変なことゆうて お邪魔してもてごめんなさいね
[話かけてから どこか心地悪そうにしていた
彼女の心の内の正体は知ることはなく
ただ一度 演奏を中断させる素振りもみていたものだから
申し訳なさげに 一言わびて去る
目が見えずとも 誰に依ることもなさげに一人立ちして
凛と生きている彼女は気丈で立派だと そう思う
思えど口には出来なかったのは――少しの劣等感
けれど 背中で聴くうたごえはやはり
悲しくはないのに 心を締め付けるような 何かがあるように思えて
留まって聴いていたかったけれど 名残惜しげにその場を離れていく
いつか舞台で 彼女の三味線と自分の篠笛で共演できんかなぁ そんな思いを馳せながら 買出しを済ませるため 通りを歩いては市場のほうへ*]
(107) 2015/01/23(Fri) 19時半頃