―回想・26話『男たちの挽歌〜エレジー〜』―
……羽沢……さん…
[燃え落ちた資材が落ちる音がする。あかあかと燃える炎がまだらに登場人物たちの顔を照らしていた。羽沢夫人から流れる血もまた、床を赤く赤く染めていった。黒木の背の後ろで倒れた羽沢教授もまた息絶えようとしているのだろう。傷つき、愛する人を喪おうとしている今、それでも夫人はやわらかい微笑みを見せていた]
……はい、笑って…ます……
[黒木が目を細めると、墨煙で汚れた瞳の端から涙が零れおちた。]
わかりました。羽沢さん。
任せてください。この子も……そして譲司も。
どの子供の未来も俺が…俺たちが守って見せますから。
[声を絞って、明日を誓った。
だが赤ん坊を迎えるべく差し出した手は時すでに遅く、羽沢夫人からの手ごたえはない。既に亡骸となった夫人から、黒木は一人の少女を預かったのだった……
第26話・『男たちの挽歌〜エレジー〜』FIN]
(106) 2011/12/13(Tue) 01時半頃