[ラルフの癒しを得ても、依然ビアンカの身は王の手中にあった。
意識を取り戻そうとする彼女へ更に自らの影を伸ばしてその身を絡め取り、彼女の身体を攫おうと迫る。
ベネットやラルフがそれを阻もうとすれば、二匹の闇狼《フェンリル》を二人の男へとそれぞれ解き放つだろう。]
色々と、問いたい事もありますが――
まずは《光》の奪取が先ですね。
貴方達には、彼らが相手をしてくれるでしょう。
私とやりあうなら、最低限、この眷属ぐらい蹴散らせるでしょう?
[口端を上げてそう言い放ち、彼は《光》を手にしようと肉薄した。そのマントや指先は影を纏うと刃の如し切れ味を持つ。多少手荒い真似をしてても、奪い取るつもりだ。]
嗚呼……こちらも心が痛いのですよ。
そう抵抗せず、素直に従って頂けませんか?
[さも悲しげに眉を下げれば、かつての恋人はどんな顔をするだろう。しかしその攻撃の手を緩めることはない。
彼女を無力化させることが叶えば、王は天へと昇ってゆくだろう。
目指すは、空の亀裂のなかの虚無。そこに王の《城》――ノインシュルツ大聖堂がある。**]
(106) 2010/03/25(Thu) 00時頃