[辛抱強く待って。ようやく、人並みが途切れると、ちょこちょことりいなは近づいていく。
本当は駆け寄りたいところだけれど、今日のりいなは卒業式の大学生らしく、和装なのでそういうわけにもいかない。無理して走って転んだりしたら目も当てられない]
先生。
[相変わらず、男の人と目を合わせるのは苦手だ。でも、唯一この人だけは、慣れたような気がする。
首が痛くなるほど見上げて、微笑んだ。
赤い着物に濃紺の袴。いつもと違う格好が少し気恥ずかしくて、ちょっぴり頬が赤い]
4年間、お世話になりました。
[教え子として、丁寧に挨拶をして、ぺこりと頭を下げる。
それから顔を上げて、頬を染めて。目の前の人にしか聞こえない声量で、続きの言葉を]
……それ、で。
これからも、よろしくお願い、します。
…………ぎ、んじ、さん。
[もう生徒ではないから。
初めて下の名前で呼んで、微笑んだ**]
(100) takicchi 2013/10/14(Mon) 19時頃