おい、…無理して喋るな。
[しばらくの沈黙>>86の後、掛けられた言葉>>87に、行き場もなく彷徨わせていた視線を再び、弟へと戻す。
一言だけ掛けた気遣いの言葉の、なんと場違いなことか。
意識だけははっきりしているようなその様子を、疎ましいと思った。いっそ前後不覚にでもなってくれたら、この罪悪感も居た堪れなさも、もっと薄かっただろうに。]
……助けて、やりたいさ。
眠らせてもやりたい。
ずっと――そう思ってる。
[質問の形をしたその言葉達が、答えを必要としていないことは理解っている。
それでもそれぞれに、掠れた声で、回答にもならない回答を返して。]
死ぬな、よ。
[そうして震えた声で付け足された問いには、一つ覚えのようにそれしか返せない。
俯いた表情を追って、ついに零れた涙の雫を見て取れば、そろりと手を伸ばして触れる。
誰かの涙を拭ってやったことなんて、拭ってやろうと思ったことなんて、今まで一度もなかったけれど。]
(96) 2014/06/28(Sat) 09時頃