[5年前、"王に反逆した" ある地方領主が討伐され、そこの騎士団長だったヒューの父は城主と運命をともにした。
まだ正規の騎士でなかったヒューは姉と妹を託され、落ち延びた。
流浪生活の中、ある夜、妹が忽然と消えた。
懸命に捜索する姉弟の姿はその地の領主・クラリッサの目に留まったのだろう、事情を聞いたクラリッサから姉弟は庇護を受けた。
結局、妹が見つかることはなかったが、姉弟はそのままその地に住み続けた。
湖の城で働くこと数年──クラリッサの侍女となっていた姉が失踪した。
旅の男と駆け落ちしたのだという噂に、ヒューはただ歯噛みするしかなかった。
そんなことがあった後もクラリッサの態度は変わらず、残されたヒューを城に置いてくれた。
そして1年前、ヒューの20歳の誕生日に、彼女は自身の手でヒューを騎士として叙勲してくれたのだ。
以来ヒューは、恩と償いと愛のすべてをもってクラリッサに仕える騎士として在る。]
(93) 2012/04/28(Sat) 09時半頃