[ふと顔を上げれば、いつの間にか増えた人に一つため息を吐く。
――これ以上人が増える前に退散する事にしよう。
そう考えて、最後の一切れを咥えて立ち上がった。
新しく食堂に入って来たらしい彼等>>82>>85には目もくれず、食堂を突っ切る。
逃げる様に食堂を後にしたは良いけれど、さて、何処に行こうか。
ふと考えを巡らせて、そういえば図書室があったと思い出す。
あそこなら、誰にも邪魔されずに読書する事が出来るだろう。
幸いにも、此処の患者は皆本を読む習慣は無い様だから。
活字の崇高さが分からないなんて、馬鹿な奴らだ。
そんな事を考えて、ふん、と。鼻を鳴らした。
――ディーン程本に執着する方が余程おかしいのだと、彼自身が気付く事はない]
[知らず軽くなる足取りのまま、食堂を後にする。
いつもの癖で本を開いたまま歩き出して、物語の世界に没頭を始めた。
それでも足は止めていないので、もしかしたら誰かにぶつかってしまうかもしれないけれど。
まあ、ディーンが気付かないとしても、その誰かの方が気付いてくれれば、そんな事態も避けられるのではないだろうか]
(91) 2014/06/21(Sat) 13時頃