[後ろへと逃げる体を見て、触れようとした手を引いた。>>85
何も掴めず握り締めた手に視線を落とした。手を差し伸べた時は掴んでもらえたが、触れられるのは嫌いなのだろうか。]
こっちこそごめん。気にしないで、大丈夫だから。
[だとしたら今ので嫌われたのかもな、と思えば表情が段々と翳っていった。ただでさえ図々しいお願いをしたりしているのだ。本当はこうやって話すのも面倒なやつだと思われているんじゃ、と坂を転がるように思考が落ちていく。]
それ、なあに?
[鞄の中を探る音が聞こえ、顔を上げれば布に包まれた何かを取り出していた。布を取り払えば掌程の長さの棒に花細工が付いていた。白から桃色へグラデーションがかった花は見たことのない種類の花だった。]
かんざ、し?んっと、髪飾りのひとつだっけ。
初めて見たけど、綺麗だねえ。ここらへんの花とか可愛いし。
[聞いたことはあるが実物を見るのは初めてだ。行儀悪く机に肘をついて、顔を緩めながら簪を見つめた。
質屋の場所を聞いたことからして、売ってしまうのだろうか。値は高く付きそうだし、と考えながら見せてくれた礼を短く伝えて微笑むと頭を下げた。]
(87) 2014/05/11(Sun) 18時半頃