[たくさん積もると、雪だるまが作れます。
穏やかな声で少しだけ楽しそうに続ける。冬も雪も知らないクシャミに、以前子供向けの絵本で冬の遊びを見せやったのを思い出した。赤いバケツを被った雪男の絵本。──もっとも、冬も本番となれば、全てが雪に埋れてしまうのだけれど。]
今年は冷えるのが早い。冬の支度も急がねばならないですね。
[窓の外を再び眺める。外からは相変わらず、降り始めの雪が屋根や壁を撫で落ちて行く音を聞かせている。
寒さのせいだろうか、左足の膝下、義足の付け根が少しだけ疼く。この時季には、古い傷がどうにも軋むようだ。
湯気の立つカップに口を付ける。身体が温まるのと同時に、古い記憶も溶け出したようにぼんやりと浮かんでくる。
ゆっくりとしか歳を取らないチャールズにとって、最早何度目の冬だろうか。こんな小さな村でも、少しずつ変化は訪れる。
サイラスは二度目の冬をどうするのだろう。クシャミには初めての越冬になる。子供だった赤い屋根の茶屋のソフィアはすっかり可愛らしい女性になったし、元気な靴磨きの少年トニーも、もう赤ん坊ではない。]
(80) 2013/11/17(Sun) 10時半頃