[徐々に赤くなる顔を茶化すように笑うと、一回り背の高い彼の顔に私の顔をできるだけ近付けて、真剣な口調で切り出す。
今までは、先輩から後輩へ話しかける口調だったけれど。
今この時だけは、“女”から“男”へ話しかけるような、そんな口調で。]
――もうすぐ、卒業して、いなくなるんだよ私。
入試に受かれば県外の大学。会えなくなる訳じゃないけど、かなり遠いよ。
他にも……他にもさ、魅力的な子はいっぱいいるよ。
私なんて、ただ口うるさいだけの先輩だったでしょ。
あんたは変な下心ばっかりだけどさ、それさえ直せば、もっとたくさんの子とチャンスができるはずだよ。
……私で、後悔しない?
私と一緒になって、……幸せになれる自信、ある?
[だんだんと、赤く、赤く、赤くなってゆく顔と、震えが混じる声。
どうして亀梨に対して、こんなに真剣になってるのかは自分でも分からない。
彼から向けられている好意のようなものから、目を背けることはできなかった。
もしこれが全部、私の一方的な思い込みなら――さっさと目を覚まさせて欲しいと、そう思う。]
(79) 2015/01/02(Fri) 01時半頃