…マーチェのジーサンに。絵見せてもらおーと思ってたんだっ、た。
[自分も相手も誤魔化したような答え。ズリエルと会ってから晴れていた翳りが、再び双眸に落ちる。
暗澹とした吐き気じみたものが胸の奥から競り上げて、ぐらぐらと視界が揺れそうになる。
腕の中のささやかな体温を、落としたくはない。
そうなる前にと、羽根のように軽い身体をそうと床に降ろした。目線を合わせてしゃがむと、ポケットの中を漁る。備品室からくすねた飴玉の包みを幾つか、小さな手に握らせた。]
コレな。『外』で売ってるやつ、こっそり貰ってきた。
一人で食ってもいいし…そうだな、新しい奴、来てたから。クマみてえでデカいけど、やったら仲良くなれるかもしんねーぞ?
[ナイショだと言い含めて、ぐりぐりと頭を撫でてやる。
誰かと食べてくれれば、自分が吐いた嘘にも気付くだろう。その黄色い飴玉は、とても酸っぱいのだ。渡した幾つかのうち、甘いのは青い一粒だけ。余程運が良くなければ、ペラジーも一緒に食べる誰かも散々なのは間違いない。
シーシャがペラジーに何か与えるときは、大抵がこんな悪戯ばかりなのだが。一向にその応酬は、止む気配がない。]
(72) 2014/09/03(Wed) 02時頃