[景色が開ける。森を抜けると足下の柔らかな土は途切れ、そのすぐ先には砂利が混じる。
そのまま歩を進めると、徐々に草の生えないざらついた土から、ごつごつと固い岩肌に変わってゆく。
夏生が辿りついたのは僅かに隆起した岩場。首を廻らせれば、岩礁と、少し進んだ低い位置には砂浜が見える。
その、砂の上で。]
………、
[一組の男女がもつれ合っていた。踊るように、あるいはがむしゃらに、殺気を隠しもせずに撒き散らしながら。
そこで対峙するのは、千秋と…凛、だったか。
気配を殺すこともなく、隠れもせず、夏生は岩の上に立ち尽くし、その光景を見詰める。――嗚呼、矢張り。]
――イイなァ。
[陶然と、声を漏らす。胸の奥、瞳の中、どうしようもない炎がとろとろと燃える。
夏生は疾うに自覚している。
自分自身がそれに、抗えない事を。
直ぐにそれに、飲み込まれてしまう事を。]
(69) 2013/10/24(Thu) 22時半頃