[ 気がつくとずいぶんぼんやりしていたらしい。
ふと丘の上を見れば、亀吉と志乃が丘の下のほうで話をしているのが見えた。>>61>>62
距離があるので話の内容までは聞き取れないが。]
……、 ……。
[ 一度里を出てから戻ってきた三つ年上の少女は、
日頃出歩かないこともあってあまりその姿をみかけることはないが、それでもずいぶん綺麗になったと思う。
とはいえ、里を出る前の彼女のことをそれほど明瞭に覚えているわけじゃない。
幼い頃、己の周りには積極的に此方に構ってくる奴と、
遠巻きに眺めてくるだけの奴がいたが、彼女は後者のほうだった。
彼方もきっと、おにごの己にいい記憶なんてないだろう。
……ただ。
仕事の途中で彼女の家の近くを通ったときに聞こえてくる琴の音は、とても好きで。
正直、彼女の容姿よりもそちらのほうが強く印象に残っている。]
(69) 2016/04/22(Fri) 11時半頃