[貴族を、黄金を嫌悪している所為か。
歪なパーティの織り成すどこか澱んだ空気に当てられてか。
壇上の"栄光"よりも、ただただ、年端のいかない少年に竦み、恐れ、どす黒い感情が胃に鉛を詰める。
耳に届く、門前で交わした声>>57
振り向いた顔には恍惚も高揚もない。ただそれは、彼も同じだったかも知れないが。]
ご機嫌よう。
………君も、もう黄金の果実、は良いのかい。
[遠目にだが、壇上近くで果実を眺めていた後ろ背を、見ていた。
舌打ちがもしも耳に届いていたならば、こんな質問もしないのに。男の耳には足音も、舌打ちも届いていないようで。]
ああ、……… 心配をかけたね。そんなに酷い顔を、していたかな。
―――妻は病気で、今日は来られないんだ。
[代わりに連れ添う色黒の少年と、闇色。
二人にそれぞれ視線を投げ掛け、ぎこちなく笑う。]
(60) 2012/09/24(Mon) 21時半頃