[非道いのはやはり自分だ。彼女の涙すら愛おしいと思うのだから。
きっとそれが彼女を哀しませると知って、こうして話をしたかったのだから。
彼女に渡すハンカチはもうない。冷たい外気の中、手袋越しに分かるはずのない
暖かさを持った頬に触れた指に、涙が通っていく。
頬に触れた手、そのまま、言葉なく、彼女の目をじっと見る。
もしもその目が閉じられたならそっと…… …]
……
[…こうして二人で居るだけでも、厳格な者が見れば懲罰対象だ。
自分は構わない。だが彼女に迷惑をかける訳にはいかない。
髪の一房を、するすると名残惜しげに手のひらを滑らせながら手を引く。
目を閉じ、ペンを取り、紙に綴る]
"ありがとう。君か、自分か、別れがまた来る前に
また話をしてくれると嬉しい"
[今日で終わりでない事への喜び。
いつかは終わるのだろうと言う恐怖。
そして、例えそうだとしても帰還を、再会を願う希望]
(56) 2012/03/29(Thu) 18時半頃