[素直に開放してやるつもりなど、ない上で。
からかうような問い掛けを、恐らくはそういったつもりもなく、重ねて投げかける。格子の狭い間に指先を、手の先を滑り込ませる。相手に触れようとするかのように。
その手にもしヨーランダが危害を加えようとしたならば、あくまで愉しげに笑い、それを甘受しただろう。何もなかったとしても満足げな様子で、格子を撫でるようにしながら手を引っ込め]
……私はそろそろ失礼しよう。
[また、と言い残し、踵を返す。そのまま収容所を後にすると、新しい白衣とシャツを取りに行ってから、シャワー室へと向かった。そうして姿から血の痕を無くした後でも、爪の間には沈み込んで消える事のない赤黒い色が残っていたし、何より男に深く染み付いた血の臭いは、到底失われるものではなかったが]
……さて。
[髪を結い直しながら、食堂へと*向かった*]
(56) 2010/10/25(Mon) 03時頃