研究には犠牲が付き物だという事だ。
別に殺すのが目的なわけでもない。
不死を作り出せるかどうか? ……さあ、どうだか。
[主な研究内容と、延いては目的としている筈のそれに、男はしかし執着も矜持も滲ませない。牢の格子に細く長い指を這わせ]
達成出来たなら僥倖だな。行為があれば死があるという哀しき因果から開放されるのだから。
出来なかったなら……クク。……私はそれでも構わない。
死に囚われていたとて、それは貴ぶべき対象なのだからね。
そうだ。この手で切る事が出来るのならば……
[呟くように言う。ヨーランダに真っ直ぐ向けた左目には、深い狂気が沈んでいた。それは研究狂というより、殺人鬼や狂信者といった者達を連想させるような物であったかもしれない]
……他と同じように、なりたいかい?
物言わぬ肉塊になりたいかい?
尽きない苦痛から開放されたいのかい?
(55) 2010/10/25(Mon) 03時頃