[騒々しくも静かな出立
主の外出に準備を怠ってはいなかったが、かくも激しくなる雨天のために朝より忙しく駆け回っていた。
空1面を塗り尽くした灰色は、大粒の雨を降らせて主の道を遮るかのように飛沫を傘にぶつけている。
濡れるのを防ぐために開いた1本の傘のこうべは、前へと垂れてその踊る水の道から車へと濡らさぬ主を渡す道を開けていく。]
行ってらっしゃいませ主様……
[見送りは決まって門の隔ての屋根の下、広げた傘をしまって角度の決められたお辞儀を他の使用人達と共に向けてはそのお車の駆動音と赤いランプが遠く離れて確かめられなくなるまでのお見届け。]
………。
[1つの役目を終えたロイエは顔をあげ、今度は先程開いたのとは別の…使い回しの傘を代わりにさして館へと向きを変える。
ふと、見上げた空からは淀んだ空気が館に流れていくような気がした。]
(47) 2022/06/27(Mon) 21時頃