……まぁ、内容に心当たりはありすぎるんだけど。
[チラリとスーツケースに目をやる。
先日、彼から届いた結婚式の招待状。返事をまだ送っていないそれは、どうしたものかと思いつつも、結局この旅にも同行してもらうことにして、鞄の奥底に潜んでもらっている。
未読メールを開くと、果たして思っていた通りの文面で、出欠席の返事の催促がされていた。
『お前うっかり屋で忘れっぽいんだし、早めに返事出して、スケジュール空けとけよな』などと、余計な文面まで添えられて。
一つため息を吐くと、彼が嬉しそうな顔して結婚の報告をしてきたときのことを思い出す。
こんな表情がはたして人間にできるのだろうかと思わせるような、幸せの絶頂というような笑顔――そう、男がいつも浮かべているような人当たりのいい作り笑顔とは全く持って違う顔つきで]
……俺の気持ちも知らないで。
[無性に腹立たしくて、それでいて切ない思いを必死に隠して、努めて笑顔でおめでとうと口にしたら、彼は鼻の下の伸びきった、とんでもないアホ面を見せてくれた。
そのときになって、やっと諦めなければならないのだと悟ったのだ。――彼への恋心を]
(46) 2014/12/05(Fri) 02時頃