― ※※ 座敷守家 縁側に面した部屋で ※※ ―
[ちゃぶ台のそば、部屋にエキゾチックな旋律がくねりながら流れだす。
シャーナイ(※オーボエやファゴットと同じ、ダブル・リードの木管楽器)に似たパイーパティ伝統楽器の音色が王技の始まりを告げた。
名乗るだけで人が踊り出すのだ。
こんな風に王族と人が密着し精霊に力を借りようとしていれば、魔法のランプもないのに極楽浄土の彩雲が室内に立ち込め、天女の羽衣がそよ風にたなびき、優曇華が青畳で3000年に一度の開花日を迎え、優曇華の蜜を吸いに幻の蝶たちが窓もあいていないのにやってきて、どこからともなく独特の女の歌声が前奏として流れてきても無理りからぬことであった。なんなら屋根があるのに後光がさしていた。
ヤニクが好んで身にまとっている香が、まるで楽園の花畑、はたまた神の飲み物ソーマのように、甘やかに爽やかに優雅に鼻孔をくすぐる。
辺りがクリーム色の光にとろけ始めた。(※座敷守家からは一歩も外に出ていない)]
(42) 2018/03/30(Fri) 20時頃