しかし、俺が君の名を…か。
それは中々良い案だ。それなら…君の舞台も観れるし、例え舞台に立っていても――
――俺のものだと、感じられる。
[囁くように最後の言葉を紡ぎ、燻る小さな独占欲のままに噛み付いた首筋に揺れた瞳に、口元を歪め。
触れて来る指を見送っていたのなら、開けられた喉元へと触れる吐息にずくりと胸がひとつ、疼く。
だけれど、続いた"愛称"には。
首元の開いたシャツもそのままに、男にしては珍しく…ぽかん、とした表情を、浮かべはしただろうか。]
………、
愛称、…、
誰かにそう呼ばれるのは…何年ぶりかな。
[口元を手で覆い、呼ばれた名を、慣れないその名を綴る声をも頭の中で反芻する。
一度、二度。噛み締めるようにその名を繰り返したのなら、覚えたのは何処とない気恥ずかしさと――えもいわれぬ、歓びと。
まるで初めて彼の気持ちを告げられた時のような、ジワリと広がるこの感情を何と呼ぼう。]
(32) ねこんこん 2014/10/11(Sat) 21時頃