―朝―
[突き刺すような陽光に催促されて目を開けば、朱に囲まれていた。鼻を突く鉄の匂い。
思い出した。私は、彼女を…
あっさりと事切れた彼女。鮮やかな朱。
皮膚を裂き肉を斬る感触ははっきりと右手に残っていて…そう、ソファの足元に落ちているナイフがその証。無事一人でやれた証。
まだ終わってはいないけれど、これが少しは皆を守ることに繋がっただろうか。繋がっているはず。
誰も私を起こさなかった。そのことに少しだけ安堵する。
私が起きなかっただけかもしれないけれど、それは裏を返せばその程度の起こし方しかしなかったということだから。
シエルの目>>4を思い出せば、こんなことしたくなかったのだと声には出さずに心の中で呟いた]
今朝は誰も、死んでいないのよね?
[縋るように声を絞り出す。
そこには誰がいただろうか。あるいは何者もいない虚空に向けたものだったのかもしれない。]
(31) 2014/06/03(Tue) 19時頃