[二人の様子を、再び背中から見守る。
広葉樹の下に歩み寄る、男の靴の音だけが響く。
いつもと異なる手品の呼び方に男は道化になりきって、節を付けながら唄い出した。]
Brutti ma buoni!
そう、僕の『魔法』だ。
今日のは、12時になっても解けないとびきりの。
……そのビスケットをもう一回叩けば、増えるのは明日の朝食の後だけどね。
[ベンチに腰掛ける二人>>21の姿。
その様子を見て、ようやく男はまともに微笑む。]
木の下のベンチに座ってもいいのは、男性と女性の二人だけ。
演者は舞台袖で互いの空気を繋いで––––…え?
[二人きりにさせようとしたところにビスケットの欠片を押し付けられる>>22。
戸惑っているうちに口の中に押し込めらられば、口を動かしながらおとなしくシーシャの隣に並んだだろう。
ビスケットって、こんな味だったっけ。
それは思ったよりも味がしなかった。]
(29) 2014/09/10(Wed) 01時頃