[廊下へと出れば本の中身に目を通すこともなく、あてどなくふらふらと、歩く。歩く。
指先に巻かれた白い布を剥がして。
これはどうして巻いてあったんだっけ。なんて考えていた。
指先に伝う鈍い痛みは珍しいことではない。
手当してもらったんだっけと首を傾げる青年はすでに一度センセーの部屋へ訪れた目的を忘れていた。]
オマエ…、"部屋で休んでくる"んじゃなかったっけ?
[その時、不意に視界に飛び込んだ分厚い包帯に覆われたその人>>21を見て思わず皮肉めいた言葉をかける。
彼の休んでくるという言葉が大体は言葉だけに終わることを短くもない付き合いの中で青年は知っていた。
少しでも長くみんなといたい。
それが理由であるとは本人から聞いたのか、
それともシーシャの推測だったかは定かでない。
どちらにせよ、そのことについて青年が口にすることはない。]
(28) 2015/06/07(Sun) 15時頃