― 酒場 ―
[昼は飯屋、夜は酒場。旅客を泊める宿まで揃える店は、需要に合わせ姿を変える。
日が昇ってから沈んだ後も忙しなく店内を回るタバサは、自分の姿を認めれば、声を掛けてくるだろうか]
やあ、一杯貰えるかい。
[挨拶よりも先にねだる言葉は、先に酒にありついている老人と同じもの。>>5
いつもの、と略式の注文さえ省略してしまう粗雑さも、いつものことだ。
老人の隣に無遠慮に腰掛け、今日の釣果は?なんて尋ねてから漸く、手に提げた干物を思い出してタバサの眼前に突き出す]
タバサちゃん、これ、摘みに使って頂戴。
もうね、今日は早々に店仕舞いだったんだよ。うちの人がいつまで経っても帰ってこないからさ。
ねえ、ヌマタロウさん、今日はウチへの商品提供はナシかい?
[そう言って、勝手に魚籠を覗き込んでは、随分と空洞の多い穴に肩を竦めてみせた。>>12
知らぬ内、『鱗の女将』は女店員と商品の取り合いをしていたらしい。>>13
店に並ぶ光る鱗にすっかり飢えてしまっているが、結局はそれを酒場へ卸して食うのだから、いよいよ店の存在意義が問われそうだ。]
(25) 2016/09/14(Wed) 19時頃