[目を開けると、そこは小さな病院だった。壁に寄りかかって座っていた女性が辺りを見回すと、汚れた白に染められた壁が目についた。黴臭く、埃の積もった床は、息苦しくさせるのに十分な量。口元に手を当てて咳き込むと、喉から出た血の塊が両掌にべったりとつく][――僅かに残る記憶は、白い病院。ここではない、もっと広い大病院の個人病室。ここでの入院生活が、女性の唯一の記憶であり、生き方だった。そして女性は、幸せに嫉妬し笑顔に執着し優しさに絶望し愛を渇望して――――死んだ]また、生きなきゃ駄目なの? せっかく死ねたのに。[感情の籠らない声に答えるように。小さな病院の窓辺で、黒猫がにゃあ、と悪魔の声をあげた。]
(23) 2012/02/09(Thu) 23時頃
sol・la
ななころび
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