―広場―
あいつめ……一体どこへ行ったのだ。
[ヴェラは、ぬかるみの中に置き去りになっている革袋>>2:194をつかみ上げ、ゆっくりと周囲を見渡した。
そこに、人影は見当たらない。「あいつ」と示した少女が握りしめていただろう革袋>>3:45だけが、雨に赤く染まっている。
「持っていろ」と言われていたものを、無下に放り出す人間には思えない。
それだけの事態が、なにかここで起こっていたというのだろうか]
まったく。すべてが終わったことを教えてやろうと……ぐっ。
[革袋を手に取り、胸によぎる不安を払拭するように吐き出した呟きが、中途で途切れた。
袋を掴んだ、右手が熱い。
思えば、通常の動植物や人間ではない、短時間の間に2人もの魔法使いを生贄としたのだ。
おそらくは、彼らに宿っていた魂と共に。
伸ばされた右手は、赤い雨でもその色を隠せないくらいに、赤黒く明滅している]
(19) 2013/06/19(Wed) 20時半頃