[ふしぎだなーふしぎだなーと、歌うように紡ぎながら、
枝に抱かれた赤い実を撫で続けていれば、>>1空腹であることを思い出させる呼びかけが耳に飛び込んだ。
生まれた林檎の子は早速パイへと作り替えられたらしい。
知識欲よりも深まる食欲に突き動かされつつ、手に取った実を籠に詰んでしまおうと、蔕を切る鋏に力を入れる。
じょきん、という音と共に、枝から切り離された実は重力に従って、手の中に収まった。
一度頬擦りをしたのち、籠にそれを優しく放り込む。]
んー。
おもーい、なー。
[重量のある籠を細腕でなんとか担ぎ上げ、
>>8先に軽々と運んで行ったケヴィンさんの背を見送りながら、後に続いた。
籠の中いっぱいに詰め込まれた、親元の木を離れた林檎の子たちを、
こうしてどこかへ連れ去る私たちは、まるで人攫いなんじゃないかしら。なーんて。
そんなことを思ったりするくらいには、やっぱり頭の螺子が足りていない。**]
(17) 2016/11/12(Sat) 04時半頃