―翌日・朝―
[朝、いつまで待っても、昨日のようにラルフが厨房へ現れることは無かったわ。テーブルには「昨日と同じ赤い手紙」。気怠げにそれを持ち上げてはテーブルに放る。今日は食事を摂る気分でもなくて、探索の最中見つけたのでしょう、固い、美味しくもないビスケットを齧ることにしたわ]
――どうして。
[そんな呟きが漏れるけど、きっと聞いてくれる人なんていない。大広間には誰がいたかしら。もしニコラスが居るならば、湧き上がった疑惑のまま、ふと視線を送って。それでも、殆ど誰とも言葉を交わすことなく部屋を出ることにしたわ。
――なにも、やる気が起きない。
日々減っていく人たち。手掛かりもないままただ日々だけが過ぎていく。
扉には鍵のかからない自室に篭って、せめて窓の外に聞こえたらいい、と歌い始めるわ。あの日も歌っていた、高いソプラノで、Ave Mariaを。*]
(16) 2016/10/11(Tue) 07時半頃