[どれだけ叩いても開かなかった扉が開く音>>#0。
望んだはずのその音は、それでも嫌に空虚に響いた。
繰り返される謝罪の言葉はあまりに現実めいていて、非現実から引き上げられたばかりの身には、まるで遠い世界の言語にすら聞こえる。
自身が身を置いていたのは、正しく"そちら側"の、筈だったのに。
半ば呆然としながらその言葉を聞いて、下げられた頭>>#1にも、到底声を掛ける気にはなれない。
茫洋と彷徨わせた視線は、亡骸を抱えたままのグレッグ>>6へと。
歩み寄っては、真っ赤に染まったメスを握りしめた、同じく血塗れの手へと。ゆるく手を重ねた。]
……グレッグ、
も、…いいから。
[もう終わっただとか、そんな冷静な言葉を告げるつもりもない。
ただ彼の手に――いつか繋いだ暖かなその手に、人を傷付ける為の凶器が握られているのが、厭だと。
それだけ。]
(7) g_r_shinosaki 2015/08/30(Sun) 20時頃