[鈴の音が鳴ってから74(0..100)x1秒ほどだろうか。扉が控え目にノックされた。失礼いたします、という言葉の後に重厚な扉が開く]
[扉の先には、執事が立っていた。白髪の彼---ハワードは、麗しの主の姿を認めると、恭しく頭を垂れる。きっちりと固められた頭髪は、動かない]
「お呼びでございましょうか、旦那様」
[言いながら、用事はわかっていた。食餌の準備はシュロが。この館の掟だった]
[ありとあらゆる用事を任しつけられるようになっても、主はこれだけは頼ってくれない]
(……使用人は、あなたの手足。食餌のご用意をお任せいただけないのは、わたくしが未熟だからでございましょうか]
[形の良い眉をわずかにひそめ、内心ため息をつく。白手を正すと、主の元に歩み寄り、跪いた]
「お手伝いいたします、旦那様」
[館の住人は主だけではない。せめて、彼らの準備の手伝い程度はさせてもらえるだろうか]
(6) 2014/12/22(Mon) 01時半頃