〔こんな純粋な女性を泣かせたのは誰だろう。チャールズかイアンか、と思考を巡らせ、いや考えでも仕方がないことだと首を振る。
ただ、その見知らぬ誰かに嫉妬を覚える自分がいた。〕
(もし自分なら、決してそんなことはしないのに…)
〔とそこまで考えて、自分も大概現金なものだと苦笑する。さっきまで失恋したと嘆いていたのに。〕
(こんなことを言えば、ミッシェルさんは呆れるだろうか…。)
〔でも、今、この素直な気持ちを彼女に伝えたい。
何と言えばいいのだろう。出来る男、ホレーシオなら何と彼女に言うのだろう。
そこまで考えてから、いや、自分はホレーシオじゃない。格好いい外見でもなければ、洒落た言い回しも思いつかない。ならば飾らない自分の言葉を言うしかない。〕
ミッシェルさん、あの、こんなことを言うと貴女は呆れてしまうかもしれませんが…。
僕は今、貴女が心を痛める男性に、嫉妬、しています…。
それがどうして、僕ではなかったのだろう、と思っています…。
〔緊張に手が、声が震えた。自分がこんな大胆な台詞を言っていることに自分自身が一番驚いていた。〕
(5) 2013/07/02(Tue) 01時半頃