[受け取られたパンの耳。それを見て少しだけ安心した。
だが優しい、とかけられた声はちくちくと肌に刺さる心地で頭を掻き、誤摩化す。]
そんな、こと…無い。
[そう、濁す。
身体には自分の知らない古傷が多く刻まれている事を知っている。
自然に負傷するにはおかしい場所にも。千切れかけた物を、無理矢理繋ぎ合わせた古い縫合痕も。
味を誤摩化す様に、嫌な物を誤摩化す様に、自分もパンの耳を千切って口に突っ込んだ。]
……やさしいのは…ペラジーさん、じゃないですか。
[怒らず。嘆かず…
怯えたにも関わらず、逃げ出さない。
それはきっと優しいからなのだ、と。
生まれた違和感に、漠然とした結論を縫い付けた。
………そうだ、優しいから。
少しばかり残された、少ない朝食のトレイ。
乾いた立方体や散乱したパン屑をマグにまとめて、片付けながら、彼女の胸元の黒を眺める。]
(5) 2014/09/07(Sun) 00時半頃