[ベッドに付いた片手に体重を乗せた。ぎし、とスプリングが鳴る。身体が彼女の側に傾いで、もう肩同士が触れそうな程、近く。
いつだったんだろう。どのタイミングだろう。何がきっかけで?
分からない。
けれど、あのかみさまの部屋に行った時に他の誰かと話す彼女を見た時にこの部屋の前で彼女の髪に触れた時に淹れてくれた珈琲を受け取った時に途切れ途切れの小さなお礼を聞いた時に──皆の輪に混じらず、独りで膝を抱えて座っていた彼女を見た時に。
たぶん、もう、始まってしまっていたのだ。]
(マズいなあ、これ、ほんとに)
[急激に近付いた距離に、本田は驚いた顔をしただろうか。
伸ばした指が、手のひらが、彼女の頬の温度を感じるくらいギリギリの距離を掠めて──その長い髪を、つ、と梳く。
間違いなく自分の身体は触れるのを怖がっているのに、止まってくれない。]
(どうしよっか。ね、)
[彼女の息が震えた気がした。
心臓が、握り潰されるんじゃないかってくらいに、鳴く。
──ああ、これは、]**
(1) 2014/03/25(Tue) 02時頃