―夢と幻と現の境―想いは、重みだ。重く圧し掛かるものを、捨てきれず。そっと僕にだけ遺していったものを、誰かに伝えることはその想いを踏みにじるも同然であったため口には出来ない。 彼女の、彼の、運命に人知れず憂いを憶えれば胸に遺った想いがまた蘇る。 そうして僕は思い出す。 他には誰もいない食堂の斜め向かい。夜の中庭。静寂が支配する、部屋の中。 僕は何も言わなかった。ただそこに居た。そこに彼がいたのは、何故だったのだろう。 気付いていたのだろうね。君は。どんな時でも突っ伏して顔を隠していた僕に、時折気紛れに頭を撫でる。 声をあげて泣くことこそ、無かった。顔をあげないまま、ただ静かに涙する。 どちらも言葉は交わさなかったように思う。
sol・la
ななころび
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